現在の自動車には数多くのコンピュータが搭載されています。コンピュータといっても、ご家庭で利用されているようなパーソナルコンピュータではなく、マイコン(Micro Controller/ Micro Processer ) と呼ばれる小型なCPU (Central Processing Unit ) を中心に各種入出力デバイスなどを備えた組込み型コンピュータです。通常自動車に搭載されている組込み型コンピュータを ECU (Electronic Control Unit ) と呼びます。
現在市販されている高級車では、この ECU が百数十個搭載されているといわれています。
上図は自動車内にどのようなECUが搭載されているかの例となります。自動車のECU分類はいくつかの分類方法がありますが、上図ではシャシ系と呼ばれる制御系ECU郡、ボディ系ECU郡、エンターテイメント等を扱う情報系ECUに分類しています。このように自動車内には多くの制御コンピュータが搭載されており、これら自動車制御に関するシステムを車載組込みシステムと呼んでいます。
自動車に小型コンピュータが利用されたのは、排ガス規制法に対処するために導入されました。メカ機構による排ガス対策必要ですが、回転数や外部環境により給排気時間や温度等により燃焼時間や燃焼率がことなるため、これらの状況に適切に対処するためにコンピュータによる演算が必要となったわけです。
現在では姿勢制御のために車両挙動を監視し適切な対処をするためや、最近話題の自動運転などにもコンピュータは必要です。このように自動車の環境性能・快適性能・安全性能を向上させるためにECUは活用されています。
組込みシステムには多くの制約事項があるといわれています。例を挙げると省電力・省メモリ、低価格、リアルタイム性能などを代表として数多くの制約があります
組込みシステムは製品といったいで販売されることに起因する制約が多く見られます。例えば年間数千万台販売するような製品であれば、製造コストが安くなれば商品競争力が増します(安価に設定できるため)。少しでも安く製造したいと考えると、使用するマイコンは低価格なものを選びたいと考えます。すると、処理能力低く、メモリも小さいなどの制限が課せられます。そのために開発費を多少増額したとしても製造コストが下がるのは大きな魅力です。このようにIT系システムでは考慮しなくても良い制約などがあります。
また自動車のボディ系システムなどは、エンジンが切れている場合でも応答する必要があるシステムもあります(ドアロックなど)。すなわち、常に要求を受け付ける状態でないといけません。一方でバッテリーには限りありますので極力電源を消費しないように設計する必要があります。これもIT系にはない制限事項です。
組込みシステム、特に、自動車のシャシ制御系システムは、自動車の運動機能を担っているため高度な安全性が要求されます。ブレーキを踏んでもシステムエラーでブレーキが作動しなければ人命を脅かすことになります。もちろん、金融系などのシステムもお金を預かるので品質には注力をしていますが、ほんの些細な誤動作すら許容しない開発が求められます。また近年では機能安全と呼ばれる安全規格(自動車は ISO 26262 ) への対応など、安全性対策や検証には他の多くのシステムより厳密に実施されています。
政府も本腰をいれている自動運転にはさまざまな制御技術が利用されます。正確に障害物を検出するセンサ技術、的確な判断をする制御技術、道路地図等の詳細化技術などが高度化して自動運転が現実味を帯びてきます。また、車と車、車と道路、車とクラウド(インターネット)などが連携をしてより効率的かつ安全な運転が期待されます。そのような自動車は外部との情報交換が必要となり、常に繋がっている車になります。このような車を Connected Car と呼んでいます。次世代のサービスを提供するために通信技術を活用して情報交換する車には新たな脅威も露見しています。すなわち、セキュリティ脅威です。パーソナルコンピュータがセキュリティ脅威にさらされたのも、インターネットに繋がってからです。同じように自動車も常時 外部ネットワークに繋がると、セキュリティへの対策は喫緊の課題となります。
現在の日本産業を支えている自動車産業ですが、自動車が IoT (Internet Of things ) のデバイスのひとつになる可能性もあります。それには自動車に新たな技術革新や超えなければならない課題が山積しています。
自動車産業も大きな変革点を迎えています。今後も国際競争力を維持した産業であるために欧米との覇権をかけた競争に勝利するために、産官学が協力し優位性を維持する活動に期待します。
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